同日午後四時・同第三中学校内・防音会議室―\r
『生徒共は全員帰ったみたいですな』
まだ外は明るいのに、そこだけは外部と完全に遮蔽され、真っ暗だった―\r
『生徒会の連中も、もう消えました』
長・短のテーブルを組み合わして作られた円卓ならぬ方卓を、一群の大人達がずらりと取り囲んでいた。
密談の場所
陰謀が練られていた―\r
『いよいよ独裁者気取りだな。梅城ケンヤ君は』
テーブルの一角から、とある男性が苦々し気に吐き捨てた。
『玉木先生?彼は貴方のクラスでしたよねえ―授業出てるの彼は?まあ言わないでも分かるがね?』
そう―\r
ここに集うのはこの学校の教員達。
生徒会・特に教師の意向などどこ吹く風の梅城ケンヤのやり方に深刻な不満と反感を持っていた。
持っていただけではない。
失われた力や権限をあわよくば取り戻さんと、その隙をうかがっていたのだ。
さもなくば、危険を冒してまでこんな会合を開く訳がない。
それも定期的に―\r
『彼が来る分けないでしょう?毎日自宅と会長室を往復してますよ』
一年三組担任・玉木カツミの影が肩をすくめた。
『彼だけじゃなくて、生徒会役員は特別枠で高校に進学出来ますから―勉強してなくてもね?』
『全くけしからん!』
進路主任・秦タイジロウが時勢を嘆き出した。
『大体高校生徒会が優秀な後輩獲得の為にこんな制度を後押ししてる!しかも、本来ならこんな不健全な流れに灸を据えるべき教育省が、むしろ迎合し、尻尾まで振っているからなあ』
『だがこれ以上のんびりも出来ませんぞ』
一年主任・沢西トオルは暗がりの中で顔と声を厳しくした。
『我々教員は、懲罰こそ加えられないが、全ての人事権を生徒会に握られている―梅城ケンヤにだ』
『ですが学年主任―逆らえば即座に罷免されますぞ?』
同校教頭・墨沢ヘイゴは憂慮を口にした。
『我々は無力だ―少なくとも【学校内司法自治全権委任法】が敷かれてからはね』
『ですが、傍観を決め込む分けにも行きますまい』
沢西トオルは不服みたいだった。
『毎週の様に誰かが殺され、懲罰房は今や罰を受けた生徒で一杯ですぞ。これではまるで監視国家だ―こんなんで本当にいいんですか?』