学校で練習してくれている教授には、あらかじめ理由や今の現状を説明した。
教授は「お前が?」と微かに笑って、俺が冗談を言っているのだと思ったようだ。事実、教授に話す時何の迷いもなく普通に話したからだ。
いざ練習。
教授「あなたは警察官になり、どの部署で働きたいのか?」
「私は警察官になり……」
言葉が出てこない。
たった刑事課という言葉すら出てこない。
頭の中ではわかっている。しかし、声にならない。
教授「今日は調子悪いな、ちょっと煙草でも吸ってこいや」とその時の教授の精一杯の言葉だった。
俺は言われた通り煙草を吸いに外にでた。煙草に火をつけたその瞬間、胸が締め付けられた。
なぜ俺が、こんな事に…
悔しい思い、もどかしい思い、弱い自分への怒りが一気にきた。
煙草の味が中学の時吸った煙草の味へ変わった気がした。
俺は歯をくいしばり、前を向こうとした。
その瞬間、右の目から1粒の温かい水が流れた。また一粒。にわか雨のようだった。
俺はその水を汗と一緒に拭い、立ち上がって煙草を灰皿に押し付けた。表現すらできない、このどうしようもない感情と共に。