薔薇のように 6 〜story of HANA〜

るぅ  2006-03-24投稿
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(・・・え?)
近すぎて焦点が合わずボヤける顔。後頭部を押さえる大きな手。むせかえるほど甘い香り。そして、柔らかい感触―\r
「・・っんぁ!?」
状況を把握した華がガバッと身を引くと、意外なほどあっさり離れた。勢い余ってそのまま2、3歩よろける華の手を晃が掴む。
「逢いに行くから。返事考えといてね。」
甘い微笑と共に、車は闇へと消えて行った。後に残されたのは排気ガスと残り香に包まれ立ちすくむ華と、その手に握られた真っ白な一輪の花。
「なに・・これ・・。」
「薔薇じゃん。」
「きゃっ!!」
突然の声に思わず悲鳴をあげる。声の主はコンビニの袋片手に眠そうな目で華を見下ろしていた。
「なんだ、夕貴か。びっくりさせないでよ。」
「何それ、どっからパクってきたの?」
「ばっ!失礼ね!貰ったのよ!!」
「誰に?」
「誰にって・・。」
言いかけてから慌てて口を閉じる。次から次へと頭をよぎるさっきの出来事を振り払ってから、華はつんと弟から目をそらした。
「誰だって良いでしょ!」
「まぁ誰だって良いけど。」
そう言って歩き出す夕貴についてマンションへ入りながら、華は薔薇を眺めた。一点の混じりもない純白の花びら、柔らかいカーブを描く茎、身を守ろうと健気に突き出るトゲ。「白の薔薇・・。」
「じゃあね。」
気付いたらもう夕貴の部屋の前だった。
「あ・・あぁ、おやす・・。」
振りかけた手で慌てて夕貴の服を掴む。
「なに?」
「・・あの・・今日さ、誰か家に来る予定だった?」
要領を得ない言葉に夕貴が眉を寄せた。
「誰かって?」
「例えば・・昨日の友達・・とか?」
「晃?別に、約束はしてないけど。」
「そぅ?まぁ別に深い意味はないんだけど。あはは。じゃ、またね!おやすみ!夜更かししちゃだめよ!」
なんで?と聞かれる前に、華は一気にまくしたて部屋へ入った。ちょっと間を置いてからガチャンと夕貴の部屋の扉が閉まるのを確認してから部屋へあがる。
(夕貴の家に行くついでなんて言ってたけど、結局そのまま帰っちゃったし。そもそも約束もしてなかったのね。)
だいたい夕貴の家に行く途中だったのなら駅のロータリーにいた理由がつかない。あれは―\r
「私を、待ってた?」
―結婚を前提に付き合う―\r

「ホントに、本気?」
華の目には、白薔薇がうなずいたように見えた。

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