朝食を食べ終え彼らは食後のコーヒーを楽しんでいた。
少年にはまだ少し早いらしくかなりの量の砂糖で苦みを誤魔化している。
今日の朝食はいつも通りのメニューだ。パンは口の中に入れると甘さが広がり鼻を通り抜ける麦の香り、瑞々しさ溢れるサラダ、透き通った黄金のスープ。どれをとっても一流であろう。
それがもう少しで食べれなくなると思うと切なくなる。満腹感とは裏腹に後ろ髪を引かれる思い。
辛い訓練に耐えられたのもこの食事があったからだろうとレジェンドならそう誰もが口にした。
毎日のようにメインディッシュに心を躍らせたものだ。などと回想に更ける金髪の彼。よほどそれが嫌らしく溜め息をつく。
過去の惨劇の報いのため恍惚してしまう朝食の前に一悶着あったのは言うまでもない。
そうこうしているうちに、朝食の前まで横から射していた日の光も上から射すようになってきた。
約束の時間までもう時間も少ないだろう。彼らは偉人の待つ部屋へと向かった。
緊急からくる神妙さに普段の彼らからは想像できない重い空気を漂わせて…
他とは一目見ただけでもあからさまにその扉は違った。重厚感と取っ手等のいたる所に施された金の細工からもこの先の人がどれだけ偉大か伺える。それらが更に拍車をかけるように空気を重くする。
三人はこの部屋を通り過ぎることはあっても入ることはなかった。
三人は顔を見合わせ何か悟ったように頷く。
先頭に立っていた青の青年がノックをし取っ手に手を掛ける。
何故これ程までに空気が張り詰めるのか、いつもしているこの動作にどこかぎこちなさがある。
先の期待と緊張を晴らすかのように扉の隙間から光が漏れそれが徐々に大きくなる。
この一瞬の動作がとても長く感じた。
『失礼します。』
一礼し平静さを保ち言う。それに続き二人も続く。
その空間はとても広く辺りを見渡すと絵画や鹿の剥製があった。鹿の瞳がじっとこちらを見据え不気味さを醸し出す。
部屋の奥にどっと置かれたこの部屋に合う異様なくらい大きい机。
そこに偉人は顔の前で手を組み、逆光からその表情は伺えずただ鋭い眼光を覗かせていた。
『定刻通りじゃの。何もそう堅くなる事はない。』
彼らの空気を察してかそう言いこちらにくるように促すのだった。