バーチャルマリッジ

丸山美樹  2007-11-09投稿
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いつか迎えに来てくれるはず。そんな期待はとっくの昔に捨てたはずだ。
夫が女の元へ走ってから3年になる。子供がいるわけでもない身で、実家に身を寄せているのも肩身が狭かった。どうやら、近所にはまだ夫がいなくなったことは気付かれていないらしい。海外に長期の出張で出掛けていると説明しているからだ。
だが、夫の帰りを待つ貞淑な妻を演じるのも限界だった。まだ30にもなっていないのだ。人生、もっと楽しんだっていいじゃないかないか。

彼女がその書き込みを見つけたのは、偶然だった。キャッチフレーズは「バーチャル夫婦しませんか?」

ネット上での夫婦なら、実際の夫婦よりも楽に夫婦ができるかも。結衣が淳也とネット上での夫婦になったのは、そんな思いからだった。
プロフィールによると、淳也は27歳で市役所に勤めているらしい。うん、公務員なら生活も安定しているし、夫にするにはぴったりだ。趣味は、映画鑑賞か。子供のいない夫婦なら、休日に二人で映画館に出掛けるのもいいな。
「結衣っていいます。私と結婚しませんか?」
返事は割と速かった。
「いいですよ。結衣って呼んでいいかな」
「もちろん。夫婦ですからね」
結衣は携帯のキーを打ちながら、一人ひっそりと笑った。
そうそう、新婚の夫婦ってこんな感じだよね。
「これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
さて、次は何て言えばいいんだろう?
「新婚一日目の夕ご飯、何がいい?」
しばらく考えているような間があった。
「カレーかな」



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