私は一度もメールを返さなかった。
というよりも、かずま君が30分おきにメールをして、電話をして、どんなに焦っているのかがわかり、いまさら自分は何を言えばいいのかわからなくなっていた。
次の日の約束の時間…
行くつもりはなかった
しかし私は少し遠いところから彼をみた。
これで終わるのなら、私の最後の彼氏を見ておきたい…
私は彼の後ろへまわった
何度もジュースを飲んだり、タオルで汗を拭いたり、そんな姿を見ているうちに罪悪感でいっぱいになった。
私のためにわざわざ電車に乗ってきてくれた…
車校だってあるのに…
来るかどうかもわからないのに、私の分のジュースまで用意してくれて…
いつのまにか私は階段を降りだした。
「さき…」
かずま君が気付いた。
すぐに私の方へ来た。
(何を言えばいいかわからない…どうしよう…)
後ずさった瞬間、かずま君が抱きしめてくれた。
ドクドク…
かずま君の心臓の音が心地よかった。
「さきごめん。俺全然気持ちわからんくて…さきが今何を考えているか教えてほしい…」
「…」
自分でも、もう何故こんな風になったのかわからなくなっていた…
「寂しかっただけ…」
「ごめんな。」
「それと…みんなと仲いいかずま君が好き。でも…でもね、久美ちゃんだけは、あんまり親しくしてほしくないの」
私は昔ハブられて、結局理由のわからないまま和解したことを話した。
「今までは何も感じなかった…けどね、かずま君が『姉ちゃん』って呼ぶ度に、髪触っていたり指輪を借りてはめていたりするだけで、人を信じれないあの時の自分が戻ってくるの…」
精一杯伝えた。
「ごめんね」
話したから、なんとなくわかってもらえたかと安心した。
またいつも通り楽しい話をした。
けれど本当は、言わない方がよかったのかもしれない…