「さっちゃんかわいそう」
徹が言った。
「何が?」
「…何でもない」
私にはわかった。
徹が気付いてくれたのだ。久美の指輪をかずま君がはめていることを…
意味がなかった。
約束はその時だけ…
『おまえはそれを話して何か変わってほしかったん?』
友達にメールをすると、そう返ってきた。
『べつに…』
そんなのうそ。
ほんとは変わってほしかった。
自分の彼女を苦しめてたやつって、少しは考えてほしかった…
なのに何も変わらなかった。
(私なんてどーでもいいんだ。私の気持ちなんて興味ないんだ…)
話したせいで余計にその光景を見るのが苦しかった…
(私がおかしいんだ。過去のことだし…)
そう思いながら私は毎日耐えている…
私には話さなかったことを久美に話していたり、必ず…私を見てから久美に話しかけている。
目が合っても、何もなかったように久美の髪を触れる…
それでもかずま君が久美に私の話をするから、こんな気持ちになる私が間違ってるんだってまた我慢をする…
だけどね、かずま君。
そろそろ限界かもしれない。
みんなと仲いい人を好きになった私が間違いだったのかもしれない…
いつまで我慢して見てればいい?
風邪を引いて体きついときも、あなたは久美と笑ってた…
最初から付き合わなければよかったのかもね。
私はこんなに弱い人間だった。
もう、これ以上は好きにならない…
あなたが久美の髪を触るたびに、心に矢が突き刺さること知っていますか?
たくさん穴が開いても、ずっと笑ってた。
それは、あなたのことが好きだから…
私が我慢しないと終わっちゃいそうで…
でもこれからは、もう我慢なんてしない…
次にそんな光景を見た時、私はもうあなたから離れます…
それが唯一の、壊れていく自分を守る方法だから…
あなたは太陽のようにみんなを元気にしてあげて。
私は君と付き合って、いつのまにかみんなを照らしてあげられる月の心さえも失くなっていたよ。
いつから私は
飛べない鳥になったのでしょう……