黒。
そこにばら蒔いた白。
ひときわ大きな白いマル。
一つ一つが精一杯輝いて、自分を主張している。
アイツはきっと白。
俺は黒。
同じ世界にあって違うモノ。
同じ場所にあって違うイロ。
夜の暗い道を歩いていた。
〈明日もまた、いつもと変わらない一日なんだろうな。〉
ため息と共に吐き出した思い。白く漂ってすぐに消える。冬が近いせいか、少し肌寒い。ふと顔を上げた。黒い空にぼんやり漂う月。
『何してんの?どうしたいの?やめちゃいなよ。終わらせちゃいなよ。つまんないだろ?大切はいらないんだろ?』
そう言われているようで、また顔を下ろした。
『!?』
冬夜は目を疑った。ついさっきまで思っていた桜(ひと)が目の前を歩いていた。
二人で……。
〈そうか…。あいつと付き合ったんだ……。〉
冬夜は一番見たくない光景を見てしまった後悔に、舌打ちしながら、また、視界を落とした。
その瞬間。
「止めてください!!嫌なんです!!」
桜が腕を捕まれていた。冬夜は、走り出していた。桜が嫌がっている。桜が傷付く。冬夜は身勝手な考えとも思わず、男に掴み掛かっていた。
「冬夜っ!?」
「なんだ君は!?」
「桜を傷付けんじゃねぇっ!!」
冬夜は無我夢中で叫んでいた。
「もういい!!春日野さん。さっきの事考えててくれ。」
そう言い残して男は帰って行った。
重い空気が流れた。どれだけ時間がたったのか。
気持ちが静まった冬夜は、自分がした大変な事に戸惑い始めていた。
「…わりぃ。」
「帰ろっか?」
「えっ?」
「一緒に帰ろ?それとも、こんな可愛い幼なじみの誘いを断るわけ?」
「いや…そんな事は…」
「じゃ、帰ろう!」
無邪気な桜とは対象的に冬夜は罪悪感から、桜とまた、距離をおきたかった。それに桜の行動に混乱していた。
「悪か…」
「ありがとう。」
「えっ?」
「理由がどうあれ、私を助けてくれたから。ほんとは違うんだけどね〜?」
桜は、次の大会を辞退しようとしていたのだった。桜も部活に身がはいらず、結果もずっと悪かった。それを、なんとか大会に出てくれと、頼まれていたところだった。
「桜が絡まれているのかと思って…」
「ははは!!冬夜は、せかっちなんだから。」
「バカッ!俺は、桜がいなくなるんじゃないかって、いつも心配だったんだ!!俺気付いたんだ!桜が一緒じゃなきゃダメなんだ!!」
夜が静まりかえった。