僕が目覚めた西暦2500年はとても恵まれた時代だった。
あれは西暦2007年の事だ。大学を卒業できる事が決まり、財務省への入省も内定していた。ところが定期検診を受けたところ、癌細胞が全身に転移している事が分かった。余命半年という。
財務省への入省が決まり、僕の一生が保証されたと喜んでいた両親の落胆ぶりはひどいものだった。
僕は死を覚悟し、今更働いても仕方が無いので世界旅行を始め、旅行記を出版社に投稿した。
ある日、話しがあるというので両親が僕を日本に呼んだ。話しというのは、僕を低温睡眠させて医療技術が発達した未来に目覚めさせたいというものだった。
人はいつか死ぬもんだし、そこまでして生に執着したくはないと最初は断ったが、両親の強い説得に折れてしまった。
まぁ、どうせ死ぬのならばこういう事に賭けてみてもいいかと思った。
そんなこんなで僕と両親は低温睡眠会社を訪れて契約を済ませ、身辺整理をして数日後に再び低温睡眠会社を訪れ、いざ低温睡眠に突入した。