狭い部屋に大きなベッド。むき出しの肩に薄い毛布。冷えた空気で目が覚める。隣に彼の姿はない。
手を伸ばし彼が寝ていた場所に触れる。指先から伝わる痛いくらいの冷たさ。脱ぎ散らかした服を横目に大きくため息をついた。
・・・『今日も早いな』・・・
独り言が部屋に響く。
彼は勝手、気まぐれ、自由人。私は慎重、精密、計画人。相反するモノ同士が出会って恋をした。簡単にうまく進んでくれるわけがない。
彼は私の常識が通用しない。私は彼の常識が通用しない。
だから『愛情』の表現すら噛み合わない。
彼には言葉がたりない。私を不安にさせる。今日も一人で部屋から出ていってしまった。寂しい気持ちを押し殺しベッドから降りようと足を下ろした。足先に触れるフローリングの寒気。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん??冷たくない??足先で探ると伝わるじゅうたんの温もり。飛び起きて、確認するとマットにスリッパが置いてある。思考回路が停止する。
スリッパをはきテーブルに向かうと謎の物体がラップをかけられ置いてある。
『腹減ったら食え』・・・・・・真っ黒なパンに生に近い目玉焼き。クセのある彼の文字がボヤけて見える。
朝から涙腺が故障したみたいだ。
自由人の彼は気まぐれ。期待するのは止めようと思いながらパンをかじった。
『苦っ』・・・呟いた私の頬には涙がつたい、冷えた体が温かくなった。
計画人で精密な私でも彼の行動は予測不可能で。毎日振り回されてるケド。もうすぐ結婚するのだと思うと笑いが込み上げる。
二人の未来はきっとバラ色の戦場だろう。