目覚めた瞬間、自分は眠っていたんだという感覚が有っただけだ。毎日繰り返されていた睡眠と覚醒の感覚に相違ない。
最初の違和感は、眠りに就く直前の光景と覚醒した時の光景が違う事だった。とても淡い青色をした天井が見えた。四方の壁も同じ色だ。
足が向いている方の壁にかかっている薄型大画面モニターの右下に映し出されている西暦を見て目を疑った。パニックに陥るほどでは無かったのは、遠い未来に目覚めるかも知れない事を想定して就寝したからだ。
上半身を起こしてみると、自分がベッドの上に居る事が分かった。低反発マットレスに尻がかなり沈み込んでいる。寝返りを打つ必要が無く、熟睡できるマットレスだ。これは493年前にも有った。幾分改良はされているだろうが。
サーという耳鳴りがするほど静かだ。どうやら近くで戦争は起きていないようだ。
栄養状態を調整する為か、点滴注射が左腕に施されている。辺りを見渡すと、ベッドの傍らの机の上にリモコンらしきものが置かれていた。ボタンに見えたのはタッチパネルモニターに映し出されている画像だった。
リモコンを手に取り、モニターを見ると英語だらけだ。日本もついに英語が公用語になったのだろうか。それとも、何らかの理由で僕は異国に移送されたのだろうか。