ある晴れた日の朝
手入れが行き届いている庭先に、喪服姿の老人。
「あぁ~、今日は日本晴れじゃのう」
「にゃ~!」
「ほう?、タマも日向ぼっこか…そうかそうか、…」
「おじいちゃ~ん! そろそろいくわよ~」
「あっ! そうじゃったそうじゃった」
《そうか、さっちゃんが……逝ってしまったか…。》
〈昭和の初め…若い男と女〉
幸子 「わたし……わたし……慶治さんのこと、絶対に忘れないから!」
慶治 「………」
《政略結婚が二人を引き裂いた》
それから何年かして、慶治に一通の手紙が届く。
「お元気で居られますか?... 幸子です。」
慶治 「さっちゃん!」
それから何年にも渡る、慶治と幸子の二度目交際が始まった。
けして会うことは許されない....
「手紙」という名の交際が....
閑静な住宅街、そなかでも、一際目立つ大豪邸。
屋敷の前には、何本もの花輪立っている。
慶治 「ほ~う、立派なお屋敷じゃのう」
中に入ると正面には大きな遺影が...
そこには、満面の笑みで映っている白髪の女性....
慶治 《幸子!やっと会えた...やっとじゃ!》
参列者の一人が小さな声で誰かと話しているのが聞こえてきた。
「女手一つで、ここまで会社を立て直したそうよ」
「へぇ~、子供が3人も居てね~」
「たしか旦那さんは、3人目が生まれたあとすぐに、事故で亡くなったのよね~」
慶治「!!」
「慶治さん覚えていますか..幸子です...」
「もうすぐ下の子も小学生です..」
「幸子です。長女が結婚しました...」
「幸子です。10人の孫に囲まれ幸せな毎日を...」
幸子の孫の一人 「そうそう、そうえばおばあちゃんが昔...」
幸子 「あたしが死んだらこの箱を一緒に棺に入れておくれ、必ずだよ」
それは、かなり古く、年季が入った桐でできた箱であった。
孫の一人がその箱をあけてみると..