一瞬だった…
全てを失ったのは。
私の掌に弟の手があった
手首はなかった気がする
薄れていく意識の中
恐怖と冷たさの中
見えたのは一匹の猫
猫は言った
あなたは生きる あなたは死なない
生き返ったら驚くはず だけど大丈夫 あなたは選ばれた
…そう言うと猫は笑いながら消えた…
目が覚めた時
私は確かに生きていた ひとりぼっちで
鏡を見ればそこには猫の顔 猫の瞳 長い爪が…
わたしは猫になってしまった
だが不思議なのは人間には私は普通の人に見えるらしい
病院を抜けだし家に向かう
…なんて、何もないのだろう
私の家は、爆発で真っ黒になり崩れ落ちていた。
母親、父親…
弟はバラバラになり、焦げた木と区別がつかない
ひとりぼっちになって猫になって
だけど生きている
何故…