フワッと冷たい風が髪を揺らした。
鼻からスーッと空気を吸い込むと心が落ち着いた。
空を見上げると真っ暗な空にキラキラと光る星が見えた。
綺麗すぎて目をそらしうつ向く、下には何台もの車が走っているのが見える。
目をキュッと閉じて足を一歩前に踏み出そうとしたその時…。
「飛ぶの?」
え…?
目を開け慌てて振り向くと、透き通るような白い肌、サラサラと風になびく灰色の長い髪、鼻はシュッと高く、目はキラキラしていてまるで天使の様な男性がいた。
「君は飛ぶの?」
彼は恐いくらい冷静で真っ直ぐ私を見つめ、もう一度私にたずねた。
こんな時に何で人が…。
私はうつ向き唇を噛み締めた。
「貴方に関係あるの!?」
「ないね」
「とっ、飛ぶわよ!全部、全部終りにしたいの!」
彼は何も言わず去って行った。
そして、私は…飛んだ。まるで鳥になったような気分だった。フワッと下へと落ちてゆく。
ゆっくり、ゆっくりと確実に。
「そうはさせないよ」
ピタッと動きは止まり、私は彼に抱き抱えられていた。
え…?何これ…。どうなって…
「君はまだ死んではいけない」
「貴方は天使ですか?」
「どうだろうね」
彼はフッと微笑んだ。
私はグタッと気を失った。