誠二が自転車を一生懸命こいで着いた場所は、この町の高台にある公園だった。
「懐かしいね、ここ。」
私は、展望台から町を眺めた。
「高校の時は、毎日学校帰りによく来てたよな。」
「うん。ここには、沢山の思い出があるね。」
「そうだな。ここは俺にとって、ちょっと勇気が出る場所なんだ。だから、奏にもここで告白したし(笑)」
「あの時は、びっくりしたよ(笑)でも、誠二と一緒にいられて私はとっても幸せだよ。」
「奏…。俺もだよ。あのさ、手術前に言ってた事なんだけど…。」
「あ、そうだったね。何を言いたいって思ってたの?」
「だから、その…。なんだ。」
誠二は顔を真っ赤にして、頭をかいている。すごく照れている事が分かった。私は、誠二が話し出すまで待っていた。
「俺は、今まで奏と一緒に今を楽しめればそれでだけでいいって思ってた。だけど、奏が病気になって俺は奏がいないと成り立たなくなっている事に気づいたんだ。大学へ向かう道のりとか奏がいないととても寂しくて…。奏が死んじゃうかもしれないって考えちゃったら、涙が止まらなかった…。」
「誠二…。」
「だから、俺…。今だけじゃなくて、ずっと奏と一緒にいたいって思ったんだ。俺が奏の支えになりたい。これからもずっと一緒にいてくれるか?」
「…私でいいの?病気の事とかで沢山迷惑かけちゃうよ。それでも、一緒にいていいの?」
私の目は、涙が溢れそうになった。
「当たり前だろ!俺は奏の事が大好きなんだから。」
そう言うと、誠二は私を優しく抱きしめてくれた。
「誠二、ありがとう。大好きだよ。」