豊富に話題を出す男が、しばらく沈黙した後だった。ゆっくり男が覚悟を決めたように話し始めた。
どうしてもお前をここに連れてきたかった。あの滝での願掛けは俺にとって、すごくきくんだ。何年か前来た時は、結婚する相手と会えるようにって祈ったんだ。その何日か後に出会ったのが今のカミさんだ。
男の話に、私は、
縁結びの滝で願掛けした後に出会って、本当に結婚するなんて…出会うべくして、出会ったみたい…。
男と奥さんに運命を感じて悔しくなった。
男が続けて話した。
でも、今日の願掛けは前以上に真剣な気持ちで、強い想いで祈った。
私は思わず、
何を祈ったんですか？
と尋ねた。
今日お前に今の本当の状況を必ず言えるように…。そして、お前が幸せになるように…。
と男は言った。
男が何を言いたいのか、全く分からなかった。が、次の言葉で、私はいかに自分が夢の中にしかいなかった事を思いしらされた。
今、カミさんのお腹には赤ちゃんがいるんだ。あと３ヶ月程で生まれる。
……。
思いもよらない言葉に、一瞬時が止まって、つい出た言葉が、
あ、おめでとうございます。
だった。
[124] 
[0] 
[0]
