全く気のきかない言葉。それでも私にはやっと出た言葉だった。
男が私の顔を見つめているのが分かった。でも、私は男の顔が見れなかった。見たら、どうなるか分かっていたからだ。
混乱して茫然としている私の手を男がとった。男も私の手の汗を感じたのだろう。
それから男はまた話し始めた。
妊娠はこれで二回目なんだ。でも一回目は流産して、生まれてくることはなかった。それから、夫婦の中でもすれ違いとか価値観の違いとか感じたりで、離婚の話も何度か出たんだ。
私は黙って男の言う事に頷くしかなかった。男は私を見つめながら続けた。
そして、お前が俺の前に現れた。お前の前だと、安心して本当の自分でいれたんだ。くだらない事して遊んだり、笑ったり…一緒にいると、俺はいつも元気をもらって、心が休まってた。お前を知れば知る程、好きになってくばっかりだった。
男の言葉に涙が溢れる寸前だった。でも最後まで聞かなくてはいけないと思った。
妊娠が分かったのは、お前を好きになり始めた時だ。言わなきゃいけないと思いながら、言えなかったんだ。言ったらお前がいなくなるのが分かってたから…。