私を抱きしめながら男が言った。
終わらせたくて言ったんじゃない。本当の事を知ってほしかった。隠したくなかったんだ。
私はやっとの思いで顔をあげ、男を見つめて言った。
でも、もぅ会えません。
精一杯、男とこれから生まれてくる子供の幸せを想って言った言葉だった。また涙が溢れた。男を困らせたいわけじゃない。泣いて男に慰めてほしいわけじゃない。未練を伝えたい訳じゃない。ただ、会えなくなる事を受け入れたくないのに受け入れなければいけないという気持ちが涙になった気がした。
男は私の言葉を受け入れられないようで、首を横にふっている。
お互い好きなのに、今すぐ終わらせなくちゃいけないのか?
男の問いに私は答えた。
私がいれば、いつか影響が出て、先輩の家庭の何かが崩れます。いない方がいいんです。
男はまた私を強く抱きしめて、
今日は朝までずっと一緒にいたい。
と言った。
その日、私と男は初めて一つになった。幸せで哀しい夜だった。
朝、寝ている男の顔を見ると、手放したくなさでまた涙が出た。
別々の方向へ帰る時に、男が言った。
今の想いを手紙に書くよ。
私はゆっくり頷いてその場を後にした。