あらがい 1

もね  2007-11-16投稿
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人間の出会いとは不思議なものだ。
何か悪戯の様な偶然に導かれ、流れる様に別れてゆく。
もう一度、その悪戯で出会うなど、夢なのかもしれないが。
亮と言った。私より一つか二つ年上の、痩せた青年だった。茶色い髪が汗で額に張り付いている所が今も目に浮かぶ。
彼は中学卒業からこの仕事をしているらしく、道路工事も馴れたもので、随分目上の人達にも信頼され、可愛がられていた。
私達が作っているのは森林を切り開いた土地を上がるなだらかな坂道だった。砂利を敷き詰めて固め、土台を作って行く。
私は大学に入って間もない頃で、夏休みの短期間でお金になる仕事を探し、ここに決まったのだった。
監督は私がひ弱に見えるのか、嫌がっていたが、唯一年の近い亮が仕事でも気遣ってくれ、続けていた。
昼の弁当や午後の休憩には、下っ端の私が買い出しに坂の一番下にある、真新しいコンビニへ歩いて行った。私一人で行くはずが、亮が付いてきていつも二人で買い出しに行っていた。「お前が来る前は俺が行ってたんだから一緒に行ってやるよ」といつも言う。
早く戻らないと先輩に怒られると知りながらも、二人で漫画を見たり、エロ本を物色したりして楽しんでいた。
朝早くから夜遅くまでの重労働に抜け殻の様になり、帰る所は、少しだけ残った林の脇に建てられた仮設小屋であった。
軽く汗を流し、まだ汗臭さを残したまま雑魚寝の様な形で与えられた寝床で泥の様に眠る毎日。
しかし、そんな先輩達の寝息の響く暗闇の中で亮は私に生活の事、大学の事などを聞いてきた経済学部はどんな事をやっているのかなど。そんな時の亮には子供の様な純真さを感じていた。亮は中学の頃、少年院に入ってから、学校らしい所には行ってないらしかった。
私はそんな亮に自分の事を話すのははばかられたが、少しずつ、お互いの事を話す様になっていった。
この時間だけは二人は真っさらな青年同士であり、気負いはかえって彼に失礼な気がしたからだ。


工事も随分と進み、坂道もかなり出来上がって来た。私の夏休みも、終わりに近づいていた。
夏の終わりのうだる暑さだけが残っている夜更け、亮と私は友達を越えてしまった。
愛している訳ではなかった。元々同性を愛する事すら考えた事もなかった。
ただ亮も私も若く、欲望だけが原動力だった様に思う。お互いに、お互いの体を、はけ口として使いあったのだ。


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