蒼白い月が夜空にポツンと浮かんでいた。空気は汚れ、星も満足に見えないこの街だけれど、あの月だけは何者にも邪魔されずボクを照らす・・・。
「ハァ・・・。」
思わずため息をついてしまう。今は夜の8時を過ぎたぐらいだろうか。11月の肌寒い季節に、都心から少し離れた夜道をボクは歩く。その足取りは前日に42・195?のフルマラソンでもあったかのように重く、疲れている。
「なにも居残ってまで宿題させることはないだろ・・・。」
今度は愚痴がこぼれた。
ボクは高校2年生のごく普通の、男の子だ。学校で物理の宿題を忘れ、ついさっきまでその宿題を終わらせることに必死だった、どこにでもいるごくごく普通の高校生だ。
ふと、夜空を見上げる。
「ハァ・・・・・・。」
深いため息がでた。
「なんか、面白いこと起きないかな・・・。」
誰かに言ってるわけではなく、そんなこと言ったからってなにかが変わるわけでもないが、ふとそんな独り言を言ってみた。
なにかが変わると願って。
なにかが変わると知らずに。