『宇宙に行きたい』
『かっこいい』
『地球を見たい』etc...
彼はそんなちゃちゃな原動力を得たのではない。
『宇宙とは何処か』
その答えを探すことで地球の重力を振り切るエンジンを得たのだ―。
〜2002年〜
隼一はよく夜空を見上げる。けしてロマンチストぶってるのではない。だが星を見て感傷に浸るわけでもない。ついでに言えば一緒に見る異性もいない。
彼は「自分が何人肩車すれば『地球』をとびだせるのだろう」とか、飛行機を見ると「あの中に人はいて自分はどのように見られているのだろう」とか、どうしよ〜もないことばかり考えているのであった。ヒマでどこにでもいる、そんな少年であった。
だが、ひとつ、他の同じぐらいの年頃の少年と変わっていたことがあった。『人はいずれ死ぬ』、そんなどうしようもない真理に、彼は焦っていた―。
ツンツンの髪を撫でながら、夏休みの工作で作った簡素な椅子に腰かけ、いつものように隼一は夜空を見ていた。
季節は11月、二枚のジャンパーをはおり、ただずっと『空』を見ていた。
彼は様々な『問い』をこの空から得た。
「あの光るヤツはなんだろう」「なんで夜空は黒いんだ」、言い出したらきりのないぐらい、『問い』をもらった。
しかし、彼は『答え』を見い出せずにいた。いや、見い出さなかった。
インターネットや本、なんでも調べれば『答え』などでるかもしれない。
しかし彼にはとてもそれが 本当の『答え』だとは思えなかった。
『問い』は『問い』のままで良い・・・。
彼は探求心がないのかなんなのか、冷めた、大人ぶった少年であった。
「黒いなぁ・・・」
彼は吸い込まれるように夜空を見ていた。
「トントントントン・・・」
母親の夕飯を作る音も、くぐもって聞こえるTVの音も聞こえない。
彼は今日も様々な『問い』の『答え』を考えては・・・そのままにしていた。
『宇宙ってなんだ』
彼の今日、見つけた『問い』だ。
「宇宙という二文字のものさしでどこまで計れるんだ?、『計れる』と言う文字は果たして正しいのか?『測る』『図る』『量る』『謀る』どれが正しい『ハカル』なのか?」
彼は夜空からもらった中、否、この世で一番難しい『問い』にぶちあたってしまったのだ。
いつも見付ける『問い』なら考えてることを放棄していただろう。
しかし彼は今回の『問い』を無視することが出来なかった・・・。