二分...短いようで長い。長いようで短い曖昧な時間
ゆったりと剣を据え余裕を見せる圧倒的な力を持つ敵へと果敢に接近
敵への距離はおよそ30m。彼らの人知を超えた速さを以てすれば、一呼吸する時間でこの距離は簡単に詰められる
その間に青の青年が思考を巡らす
──あれだけの魔術をくらって平然としている。おれの勘が当たっているならばこれで謎が解ける──
『白刃…』
左腕を一度強く扇ぐように動かすと同時にボソッと嘆かれた魔術
その刹那にそれぞれ歪な形をした6本の氷の刃が彼を取り巻くように現れる。大きさは大小様々
刃の先が敵へと向き、まず2本が同時に白いスーツへと放たれる
後を追うように残りの4本が間髪入れずに向かう。その刃は音速を越え直接的に白いスーツを赤に染めんと襲いかかる
──なにか策があるようですね。まだ楽しめそうです───
『甘いですね』
そう言い放つと瞬時に大剣を横に振りかぶる。
空いた横っ腹に突き刺さると思われた先に射た刃が、スーツの目と鼻の先で霧散した
そして、後の刃は薙払われた大剣により無へと帰す
しかしこの動作により視界をその大剣が一瞬ではあるが視界を遮った
手の届く位置まで来ていた二人が今は一人しかいない
急に足元の月の光が絶たれた。ウェスタンハットにより光を遮られた眼前が更に暗くなる
前者に気づくのが早いか、それとも後者に気づくのが早かったかはわからないほどの瞬間
『甘いのは貴様だ』
頭上から突如現れた青の青年。それを認識した白いスーツの男の表情から笑みが消えていた
振り下ろされた蒼の刃。しかし、それは無情にも空を切る。
反射的に退いた眼前に迫る矢の如く放たれ戟。それを首を左に振り、かわす。頬に流れる一筋の赤い線
たまらず空へと逃げる。最初とは違い真剣な面もち
『白刃…』
狙っていたと言わんばかりに、再度紡がれた魔術
今度は6本全てが空の敵に一度に襲いかかる
またも同じように大剣で払われるが、それは布石。
刹那に襲いかかる戟を柄の部分でなんとか防ぐが、勢いに負けバランスを崩し地へと落ちていった
『わかった』
青の青年が疑念を払拭するようにつぶやいた