5話
「腹に力入れんだよ。腹に」
「大きく口開けて」
と、言う声が梓の口から何回も出ている。
もちろん私は、どんなに力を入れても、大きく口を開けても「あ」の一言も出せない。
「じゃ、ちょっと休憩」
亜美、うなずく。
公園のベンチに座り梓が話し始める。
「亜美は、何で歌手になろうと思ったの?」
『歌うのが好きだから』
「ふーん」
『だから、早く声が出るようになって、皆に聞いてもらいたいの』
「そっか・・・。じゃ、ガンバんないとな!」
亜美、微笑みながらうなずく。
何だろう・・・
梓といると楽しい・・・
何か、心のモヤモヤが消えてくような
この特訓は1週間くらい続いた・・・。
でも、どんなに特訓しても、声は出なかった。
でも、梓といると心が楽になっていった・・・―――。