野良猫の家 最終話

unknown soloist.  2007-11-18投稿
閲覧数[331] 良い投票[0] 悪い投票[0]

そのとき、真上の雲の隙間から太陽の光が射し込んで、私たちを包んだ。
なんて暖かいのだろう。
私はハルキを揺すった。
「ハルキ…ほら、太陽だよ…」
しかし、ハルキは何も答えず、私の腕の中で固く目を瞑っていた。
どうして太陽は、あとほんの少し早く現れてはくれなかったのだろうか。
私は、胸が張り裂けそうになった。
しかし私には、もう涙を流す力すらなかった。
目を閉じると、小さな光が見えた。あの光の向こうにハルキがいる気がする。自由がある気がする。

こんなにも辛いなら、生まれて来ない方が良かった。
生まれて来なければならなかったのなら、もっと幸せな場所が良かった。
“努力は報われる”と言うが、私はどんなに努力をしても何も変わらなかった。

しかし、ハルキに出会った。

それは、誇れるほど幸せなことだった。

唯一の幸せだった。

しかし最大の幸せでもあった。

ハルキという存在が、私にとっての“幸せ”そのものだった。

ハルキ、ごめん…守ってあげられなくて。

今度この世に生まれて来たときには、絶対に守ってあげるから。そこがどんな場所であっても。

一緒に遊園地に行こうね。約束だよ。







雪が止んだ…気がした。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 unknown soloist. 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ