家を飛び出してから3週間。 一人暮しの友人のアパートに居候。
夢にまでみた『自由』ってなんだっけ…? 早くも、母親の手料理を恋しくなり始めていた…。
「アパート借りるお金あんの?」
「…」
貯金は無い。バイトもしてない。しかも高卒だから、良い会社に就職出来る訳も無い。
ただボ〜っと眺めていた窓の外に、一軒の居酒屋のネオン看板が明かりをつけた。
「あの居酒屋、バイト募集してるかな…?」
ぼんやりつぶやいた私に呆れた様子で友人は言う。
「ダメ元で連絡したら?」
このまま居候するわけにいかない。
お金も無い。
「じゃ、バイト行くから」
片手を軽く振った。
でも見てなかった。
もう一人ぼっちだ…。
数少ない友人も失いかけてる。
言いようのない哀しくて寂しくて、胸を締め付けるような…
溢れる涙を無理矢理抑えた不細工な顔で、履歴書を買いになけなしの千円札をポケットにしまい込んでコンビニに行った。
街路樹から聞こえる蝉の鳴き声
学校帰りの女子高生の笑い声
信号待ちの車から聞こえる流行りの曲
ガソリンスタンドの店員の威勢の良い声
何気ない雑音が私の心を酷く締め付けてくる。
家を飛び出した後悔は不思議と消えた。
「前に進もう…!」
決めた。私は決意した。
18歳の私の、あまりに軽く浅はかな決意だった…。