夢を見た。暗く静かなその場所で聞こえるのは自分の心臓の音だけ。
そのうち自分が立っているのではなく、仰向けに寝かせられている事に気付いた。そう、自分の意思ではなく人の手によってそうさせられていると感じていた。
風も熱も感じない。逃げ出す事もしないまま横たわり続けていると、左腕に水の感触がした。腕だけじゃない。まるで体全体を包むかのように浸食してくる。
指先を埋め、肩まで上ってくると次第に恐怖がこみ上げてきた。このまま水位が上がれば窒息するのは間違いない。
「俺……死ぬの?」
誰に言ったわけでもないのに水は徐々に速度を緩め、耳を隠した所で上昇するのを止めた。
そこでようやく気付いた。これは水じゃない、お湯だ。いや、お湯よりも冷たく水より温かい。そしてこの感触。そう、この感触は……血だ。
夢はいつもそこで覚めた。