朝になると目覚ましなんかよりも先に家中に響き渡る母の声。
「ほらっ!みんな起きて〜!!!愛っ!いつまで寝てんの〜?!学校遅刻するよ!」
時計を見るとまだ学校に行くには早すぎる時間。
はぁ っとため息をつくとまた布団に潜り込む。
食卓には、いつも変わりばえのしないおかずが並んでいる。
「また同じパターンだな〜」
弟が悪気がなさそぉに言うと、母は口をとんがらせてすねている。
今、私の家は、祖父、母、兄、私、弟2人で暮らしている。
どこにでもある普通の家庭。
私が2歳ぐらいの時、
幼ぃながらに少し記憶に残っている。
タバコの煙をよけて父のひざに乗り、ヒゲをジョリジョリっと触ると、父はニコッとして私をギュ〜っと抱きしめて、頬をくっつけて、すりすりしてくれた。
父の匂いは忘れなかった。
私は父が大好きだったんだと思う。
父も一人だけの女の子だったこともあり、私を一番かわいがってくれていたらしい。
父は自営業をしていたが破産寸前だった。
借金も背負っていて、母と父はケンカが絶えなかった。
ある日父と母は裁判をし、離婚した。
父は家にあるだけのお金を持ち、
逃げるように車で去っていった。
4人の子供を残して・・・・
私は車を追い掛けた記憶がある。
夢かもしれないけど本当に追い掛けたのかもしれない。