氷雪花−白雪舞う中で−

篝火七瀬  2007-11-19投稿
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私は手袋をした悴む手を吐く息で温めながら擦り合わせる。
「はぁ…。雪、止まないなぁ…。」
私には、絶対叶わない夢が、想いがある。
いつからか気付かないフリをしていた。
でも、これ以上自分を騙す事は出来ない、もう嘘をつきたくない。
「お兄ちゃんがスキ。」
その言葉を言えたらいいのに…。
けど、それは叶わない夢物語。
舞い散る雪の様に掌に落ちて溶けては消える、儚いもの。
「私が死ぬまで、ずっとコノママなのかな?」
不意に不安な気持ちで一杯になり俯いていると正面からザクザクと雪を踏む音が聞こえてくる。
私はその音を聞いてこちらに歩いてくる人物を見て笑顔になる。…想いを隠して。
「お兄ちゃん!!もぅ遅いよー、私随分待ったんだからね。」
「ごめんごめん。」
その言葉通り彼女の頭や肩に雪が積もっているのが見てとれる。
私は精一杯の笑顔で兄を迎える。
兄も私の笑顔につられて笑顔を返してくれる。(気付いてないよね…)
痛む良心に苛まれながら平静を装い憎まれ口を叩く醜い私…。
「今日は全部お兄ちゃんのオゴリだからね!?」
「…、しょうがないな。それで、今日のランチはどこにする?」
「今日はね、リュミオンでフレンチがいいなー。」
「…無理だ。今日日学生がランチに食べに行くような所じゃない。」
「もー、お兄ちゃんてば夢がないなー。男ならそこは嘘でもフルコースでいいか?とか言えないの→?」
白い目で見る兄がとても可笑しかった。「あははは、冗談だってば。じゃあ吉牛で特盛りみそ汁玉子付きだ。」
手を高く突き出してゴー、と歩きだす私を見て兄は楽しそうに笑ってくれる。
それが、とても痛くて悲しい事だとは気付かずに…。
私は、4歳までを施設で過ごしていた。
そこで私は、色々な理由で施設で過ごさなくてはならないという人達をたくさん見てきた。
そして、引き取られていく人達、一旦引き取られはしたもののまた施設に戻ってくる者も結構いた。
やがて、私の番がやってきた。
ある日、施設に今の両親がやって来て私を見て引き取ってくれた。

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