一緒に食事をしてから、私と可愛い小悪魔の距離は急速に近付きはじめた。
お互いに恋に堕ちてしまっていた。
会社でも、一緒に食事をし、休憩も二人、仕事が終わると一緒に外出という毎日。
社内ではかなり噂になった。
ある夜、会社の屋上で待ち合わせをした。
会社の中、外出時、周りの目を気にしてなんとか会っていた二人のいつもの待ち合わせ場所だ。
月が綺麗だった。
月明かりの下で寄り添う二人・・・。
「ねぇ、あなたの故郷も空がきれいなの?」
彼女が問い掛ける。
「あぁ、もっと綺麗だよ」
そう答えた私に
「私の故郷も、も〜っと綺麗だもん」
ムキになるとこが可愛いと思いながら微笑み合う。
「日本の歌を唄って・・・」
私が軽く口ずさむ。
当時流行った「さくら」を唄った。
うれしそうに微笑み、私の肩に頭を乗せてきた。
「あなたは可愛いね」
そう彼女は囁いた。
今私が言おうと思っていた言葉だ・・・先を越された・・・。
そのまま一時間程会話し、それぞれの宿舎に・・・。
そして別れぎわに
「晩安(ワンアン)て日本語でなんていうの?」
と聞かれた。
「日本語ではおやすみだよ」
と教え。
おやすみと言って、階段を駆け上がっていった。
今思えば、この頃が一番楽しい時間だったんだと思う。
この後くらいから、二人の結ばれない恋愛が、苦しいものへと変貌していくことになる。
愛し合っているのにね・・・。
妻子ある私に対する、彼女の葛藤、諦め、愛情の転換へと突き進んでいく。
そう、その後のこんな出来事から・・・