安い借りアパートの一室から出ると、少し長くなった金髪の髪を手櫛で申し訳程度に整えつつ、同居人をどう追い出すかを考える。
小心者で国立ウィアランス大学の首席という糞ウザい奴が何故俺の素敵な唯一のラブテリトリーに居るかというと、俺の上司だと信じたくないけど上司らしい女上司が「エステルちんが淋しそうだからぁ…私の弟を貸してあげるわよん。ただし返品不可。」
女上司はいつもはもう存在自体がふざけているのだが、我が国が誇る七大軍師の一人。
策略の君 アリス・エバンス。
断ろうもんなら軍総動員で世にも最高に恥ずかしい死をプレゼントされそうなので仕方なく、笑っちゃうくらい不本意ながらに家に置いた。
うん。なんかもう追い出す以前に自分の生命の危うさが際立ってきた。
すると、後ろから気配を感じた。
殺意
振り返ろうとした刹儺に気配の主は短剣を取りだし、「死ね!」と短く叫ぶと、突進してくる。
女だった。
これが男だったら「お前こそ死ね!この脱糞野郎!」ぐらいは言うのだが、女だとそんな気は起きない
ならば少し捻ってやれば良い。
突進してくる女性からの攻撃を避け、天へと飛翔し、女の背後に着地、素早く女のか細い手首を掴み力を加える。
「いっ…!」
「女がこんな物騒なもんもっちゃいかんよ?あっ策略の君のアリスは別ね」
「あんた…!エステル・スタラスでしょうっ…!血染めの士の!」
「ふむふむ。俺のファン?」とか言いつつも手首を離さない。
恐ろしいほどに女性の目は血走っていた。
話し合いはできそうにない
すると「エステル!」と背後から聞き覚えのある声。
とっさに
「マラス!この女をカプセルに!」
叫ぶとマラスと呼ばれた男は女のところまで音も立てず駆け、ぐさりと女の腕に鋭利な突起を突き刺した。
女性はふにゃふにゃとその場にへたり込むとそのまま気を失った。
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