おそらく街から猥雑さを排除しているのだろう。まぁ、大した事では無い。
道行く人に家電量販店はどこにあるのか尋ねてみよう。中年の男性が近付いてきた。
「あの、お忙しいところ大変申し訳ありません。ちょっとお尋ねしたいんですが」
しまった。思わず日本語で尋ねてしまった。
「何でしょうか」
おっと、日本語で返ってきたぞ。どうやら日本語も公用語のようだ。それにしても男性はにこにことして優しそうだ。
「携帯通信器を買いたいんですが、家電量販店はどの辺にあるんでしょうか」
「あ、家電量販店というものは無くて、注文すると工場から直接届くんですよ」 「そうなんですか。それでは、ネットカフェはどこにありますでしょうか」
「携帯でナビしてもらう方が早いですよ。僕が代わりに携帯を注文してあげますよ」
「いいんですか!?」
「もちろんです。少々お待ち下さい」
「はい!」
なんて親切なんだろうか。この時代は人も素晴らしい。天国だ。あぁ、幸福だ。 男性は携帯の画面を見ながら素早くボタンを押している。
「注文が終わりました。もうすぐしたら品物がここに届きますので」
「ここに!?」
「はい。ここに。僕の携帯から出ている信号を探知して小型ジェットヘリが品物を携えてやってきます」
「はぁ〜、凄い時代ですね。実は、僕はさっき低温睡眠から目覚めたばかりなんですよ。500年近く眠ってました」
「そうなんですか!いや、そういう人がいる事はニュースで伝えられていますが、まさか僕の目の前にいる人がそうだったなんて」