闇を走った。最悪の気分だった。
さっき死んだ。首を吊った。苦しかったが、生きる事より遥かに温い苦しみだった。
今、闇を走ってる。ふざけた話だった。死ねば休めると思った。眠れると思った。走っていた。
どうやら、あの世は実在したらしい。何処までも続く果てのない闇。それがあの世の正体だ。そこをひたすら走っていた。たちの悪い事に、俺の意志とは無関係に体が動いた。
かなり長い間走ったが、疲れは無かった。ただ、闇を見飽きた。眠りたかった。眠れなかった。
これがあの世なら、生きてる頃と少しも変わらない。休めない。眠れない。
俺は何のために死んだんだろう。
そう思って少し泣いた。涙は出なかった。
突如、闇に光が発生した。最初は米粒程の大きさ。それが急速に広がっていき、闇を飲み込み、俺を包んだ。
うんざりだった。どうとでもなれ。俺は思った。その時気付いた。足が止まっている。体が自由に動く。
俺は光に包まれたまま、その場に倒れこみ、目を閉じた。二度と目覚めぬ事を祈った。
最高の気分だった。