少年のポッカリと空いた記憶、それが今蘇る…
『あの魔術で…い出…ぜ。あの…髪の野郎と…たガキがいたなぁ…』
微かに耳に届くだけ
『名前は…』
シェイド
『竜の姿に…』
またの名をファフニール
『奴が使っていたこの…』
ガンブレード
全てがフラッシュバックする。走馬灯が駆け巡る
背まで伸びた赤茶の髪
大きくてごつごつした手
サバサバした性格だった
僕を助けてくれて、育ててくれたあの人
そして最後に一度だけ…
『奴の最後は美しかったなぁ。幼き少年の命と引き替えに…』
僕を抱いてくれたんだ。そして笑って…
『初めて俺を追い詰めた竜の戦士。美しい最後を讃え、奴が使っていた武器を使っていたのさ』
僕を守って…
こいつに殺された
少年の意識が戻る。鋭い眼光を男へと向ける。その瞳には涙が浮かんでいた
『うわぁああぁぁあぁっ!!』
少年の周りの空間が歪む。
空気が震え、大地が揺れる。いや、地球全体が揺れている。
全てを思い出した。
力の使い方も…
少年は眩い光に包まれた。そして、いつしか地球の揺れは収まった。
光が止む。そこにはさっきまでの少年ではなくなっていた。
黒の髪が黄色を帯びた銀の髪に、黒の瞳が透き通るような蒼い瞳に変わっていた。表情もどこか幼さは消えていた
『僕は、この世に再び舞い降りた聖人だったんだ』
口調だけは変わらなかったらしい。しかし漲る力は圧倒的
対峙した白いスーツの男がそれをひしひしと感じているはずだ
にやっと男が笑った。神を目の当たりにし気が狂ったか、それともただの苦笑いか。それはわからないが一つわかる事がある。白いスーツの男は触れてはいけない神の怒りに触れた
── もしやあの竜人はこいつの事を悟っていたのか…───
『僕はあなたを倒します』
無骨なその言葉と共に現れた聖なる光を帯びた大剣が現れた
一振り
相手に力の差を見せつける為の光速の太刀
二振り
相手を屍と化す破滅の太刀
白いスーツを真っ赤に染め上げ、鮮血を撒き散らし男は闇に消えていった
そこで少年の意識も途切れたのだった
三人が次に目にしたのは見覚えのある木目調の天井だった