『まあここで我々が額を突き合わしているだけじゃ、話は何も進みませんな』
校長は半分程になった紙煙草を灰皿に押し付け―\r
小さな赤い光はすぐに闇の中へと消えた
そして―\r
『教頭―そろそろ灯りを付けてもいいんじゃないかね?』
指示を受けて、それでも光量を極限までに絞られた照明が灯され、室内と参加者達の姿がぼうっと浮かび上がった。
『ですが、このままでは私達正統派はますます追い詰められますぞ』
白髪に疲れと焦りを宿しながら、墨沢ヘイゴはそう警鐘を鳴らしたが
『まあまあ教頭―ここは我らのリーダーの話を聞こうじゃないか』
校長はそう言うと、全員の目が会議室の主座に注がれた。
確かにそこには、彼らの指導者と思わしき人物が座っていた―\r
それは学校の教員ではない。
『で、リーダーはこの事態、どう打開すべきと思うんですか?』
沢西トオルに促されて意見を述べ始めたその人物は、厳密に言えば大人ですらなかった。
『皆さん―現状は極めて厳しく、また私達の置かれた立場は不利を極めていますが諦めてはなりません』
起立して《彼女》は、全員を激励した。
『私達の運動はまだ始まったばかりであり、部分的には梅城ケンヤの横暴に痛手を負わせたのは事実です』
《彼女》は、この第三中学校のブレザーを着ていた。
『それに、一見一枚岩と思われる生徒会にも、反対意見は出てきております』
巻き上げられたブラウンヘアーに青い目
『何よりも、日頃身近に彼に接している私から見ても、梅城ケンヤの支配力は間違いなく陰りが現れ始めました』
日本人離れした美少女だが確かに彼女はハーフだ。
『ですから副会長職にある私は引き続き彼の監視を行い、さらなる工作のチャンスをうかがいましょう―』
薄暗い照明に映し出されたその姿は―\r
港リリアだった。
そう―\r
彼女こそ学内教員派のリーダー
先会長の失政に乗じて、一挙に主導権を奪回しようと企む彼らをまとめ上げ、新会長の地位を梅城ケンヤと争うべく選挙に送り込まれた刺客だったのだ!