港リリアは港リリアは―\r
梅城ケンヤの《敵》だった―\r
『今の所梅城ケンヤに私を疑う様子はありません』
彼女は、本来なら勝つべき選挙で、僅差で二位当選となってしまい、生徒会規約により副会長職に収まる事を余儀なくされたのだ。
『更に彼は、私に私立k学院との和平交渉の全権を命じました』
それだけ梅城ケンヤのカリスマと信念は凄まじかった。
『皆さんもご存じの様に、K学院会長・九重モエは穏健派の指導者であり、これまでも度々梅城路線を批判し、修正を促して来ました』
だから彼女は作戦を変え、梅城政権転覆のために、彼が失策する隙をうかがいながら、教師達との提携を強めていたのだ。
『私は提案します―今こそこの機会を利用して、九重モエと密約を結び、来るべき日に備えるべきです』
まず梅城ケンヤの信頼を買う―\r
だからこそ、彼女は有能にして忠実な副会長を演じて来た。
『だがね、港君―それでは外の勢力の干渉を招きはしないかね?』
墨沢ヘイゴの質問に、教師達は一様に頷いた。
彼らは梅城独裁の代わりに他校の支配が訪れる事を、そして恐らくはそれによって自分達の地位が奪われる事を何よりも心配していた。
『だからこそ、九重会長しかいないのです』
内心呆れながらも、港リリアは説明した。
『あの方以外ならば、私もこんな話は持ちかけないでしょう―これまで何度か接触しましたが、彼女なら信頼出来ます。また、彼女以外に頼れる相手はいません―少なくともこの東京には』
港リリアは断言し、教師達は口をつぐんだ。
最早他校の力を借りる以外に、梅城政権を倒す方法がないのは事実だった。
全員がしぶしぶ賛意を示すまでに、さして時間はかからなかった。
彼らの意を受けて、校長は髭とともに重い口を動かした。
『では君に任せよう―遅かれ早かれ我々はここを追い出される運命だろうからね』
『では早速そのようにします―これで会合は終わりましょう。私は先に出ますが、みさなんは各自ばらばらに時間をずらしながら帰宅して下さい』
鞄を持ち、港リリアは注意を促すと、足早に立ち去った。
風紀委員は24時間体制で警備・巡回に当たっているし、100近くある監視カメラが校内を見張っている。
油断は出来ないのだ。
《処刑生徒会長第三話》 終り