晴輝と葵?

クロバス  2005-10-18投稿
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何週間ぶりに葵と一緒に帰った。

しばやく二人は無言で歩いた。

『ねぇ…。』

葵が口を開いた。

『人を慰めた事…ある?』

いきなり言われてびびった。

…あるよ、一回だけ。

『どんな時に言ったの?』

…正確には今から言おうと思う。

『えっ?』

前を歩いていた葵は振り返り、俺の顔を見た。

どおしたんだよ?学校休んだり、引きつった笑顔見せたり、お前らしくねぇよ。

『まさか晴輝に言われるとは。』

続けて葵はこう言った。

『私ね、来週に入ったら引っ越すの、お母さん…死んじゃったから。お父さんのいるイタリアに行くの。』

びっくりした。

いやびっくりするより呆然とした。

なんで?

なんで『今』なの?

行くな!行かないでくれ!

色んな事が頭によぎったけど……口には何も出てこなかった。

『結局…何も言ってくれないんだ…。』

葵は俺の顔を見て、すぐ立ち去ろうとした。

おいッ!

その一声で葵は止まった。

やっぱ…行っちまうのか?

『うん。』

行くなッ!!

気が付いたら俺は葵を抱き締めていた。

『晴輝には関係ないでしょ?他人の事なんか興味ないくせに。』

…違うんだ。

『何が違うのよ。いつも他人と自分との間に境界線を作って入らせないじゃない。』

…とにかく違うんだ。お前は俺の中ではもう他人じゃないんだ。

『それって…どういう事?』

…好きだ。

『えっ?』

…俺はお前が好きだ!誰が何と言おうとも、俺はお前が好きなんだ!誰にも渡したくない。

…ずっと…そばにいてくれよ…。

葵はしばらくうつむいていたが、涙をふいて、笑顔でこう言った。

『その言葉が聞きたかったのかも。伝えてくれてありがとう、もう聞けないかと思った。』

俺は涙が止まらなかった。

『私も…大好きだよ、晴輝。もし…晴輝が私の事をずっと想っててくれるなら、私は必ず帰ってくるから。』

そう言って、葵は俺の手を握った。俺は恐くて何も答えられなかった。

その日を最後に、俺は学校を休み、葵に一回も逢わなかった。そして葵はイタリアへ行ってしまった。



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