最後の春

緑青 龍司  2006-03-28投稿
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ゆっくりと桜が舞うのを、僕は美しいと確かに思った。けれど悲しいと思えたのも確かだ。 その感情とともに僕は何を 手に入れ何を手放したのだろう……答えは僕の中にあるのだと思う。ガキの戯れ言かもしれないけれど確かにそう思うんだ。 だから忘れたく無い、風化させたくないんだ。この思いを。 僕はよく自由とは何かを良く考える。自分が自由だと感じたものが自由と言われればそれで終わりなのだろうけど、僕はそうは思わない。思いたくない。けれど僕に明確な答えがあるわけでもなく、答えを探すように、こうして空を見上げているわけなのだが…… 「よぉ、アキト。また一人で空なんて見上げて何してんだよ。俺らも中三、来週には卒業だぜ?」 この声はアキラか……さしずめこんなとこでぼんやりしてないで最後の思い出作りでもしろ。ってとこなんだろうな。 「なぁアキト……」 きたな言わなくてもわかってるよ。 口を開きかけたとき予想だにしない言葉が耳の中に響いた。「空ってなんでこんなに広いんだろうな」 こいつがこんなこと言い出すなんて、雨でも降らなきゃいいが…… 内心そんなことを思いながらきちんとその質問に答える俺は驚きを隠せなかった。
「そうだな、ほんとの自由を知っているからじゃないか?」 ほんとの自由……自分ではわからないクセにわかりきった口調で言ってみただけ。
「ほんとの自由って何だよ」 アキラはわかりきった口調が癇に障ったのかトゲトゲしい口調だ。
きかれたところで答えなどない。だから僕はこう言う
「そんなのわかるわけないだろ?人間が知らないことを知ってるから大空は広いんだよ」
わからないクセに哲学じみた逃げ道は残しておく。そんな自分に何故か嫌気がさした。
「そうかサンキュなじゃあまた明日な」
なんとなくだがアキラはこのとき悲しそうだった……
そしてこれがアキラとの最後の会話となった。



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