1.私の:始まってみる
視界の隅
意識もしてないそこに
ヤツは
いる
始めは
ビルの上
鉄塔の上
遠くを眺めると
大きなカラスみたいなのがいた...気がした
日が延び始めた頃
ヤツは降りて来た
電車の窓から見える景色の中に
教室の窓から見える景色の中に
歪んだ仔ザルが
踊っていたように見えた
...気がした
はっきりとは
わからない
覚えてない
だって
ヤツは
いつも
意識を傾けると
視界の外に逃げて行く
そして
景色の中にとけていく
今ヤツは
私の手の届くところまで
来た
談話している友人の後ろ
鏡の中の自分の後ろ
黒くて手の長いサルが
にんまり笑う
笑って
視界の外に逃げて行く
一日に何度もヤツを
感じる
なのに
一度として
ヤツをはっきりと
見たことがない
ヤツは
私に
何をするつもりなのだろうずっと
このままなのか
......