天使と悪魔と人間の醜い世界‐5

龍角  2007-11-24投稿
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「え…」

意味が判らなかった。

今、何が起きた?


ばくはつ…



俺の隣りでは慎吾が
「父さん…本当にやっちゃったよ…テロリストだ…
みんな死んじゃたぁ…」

俺はその時まだ『テロリスト』がどんな言葉の意味か判らなかった。

だが慎吾の「みんな死んだ」という言葉に俺はハッとした。


「父ちゃん…母ちゃん…」

そう…皆死んだ

自爆テロを起こした慎吾の父親も、巻き込まれた母親と、俺の父、母。
そして全ての人が。




死んだんだ。

俺達二人は互いに抱き合ってただただ泣いた。

泣き声を上げて、止めど泣く涙を流して。

体が干からびるほど涙を流して。

その後俺達は翼が片方無い天使の兵士に助けられた。
そして難民キャンプに連れて行かれてしばらくそこで生活する事になった。

だけど慎吾はその難民キャンプで死んだ…いや殺された。

死因は集団暴行による内臓破裂と脳内出血。

天使達による集団リンチだ。

天使達は自分の家族を悪魔に殺された報復として慎吾をリンチしたのだろう。

そして今度は難民キャンプで悪魔による自爆テロが発生した。

理由は悪魔達を迫害したから。

更に今度は人間が天使と悪魔を殺した。

理由は勝手に双方の争いに巻き込まれて家族が死んだから。

・・・・・

これじゃきりがない。

いつまで経っても終らない報復の嵐。

そして今、俺の目の前には一人の悪魔の死体の側で彼の娘が「お父さん!!死んじゃ嫌!!」 と言って泣き崩れている。

この倒れている悪魔は都心の地下鉄で無差別テロを起こし160人を殺害したテロリストだ。
女の子は俺を睨み付けて「殺してやる。」と呪詛の言葉を吐いた。

しかし俺の後ろには2人の執行部がいる。

俺を含めて3人。

勝てる筈が無い。
女の子は俺達を睨み付けるとスラム街の奥へ消えて行った。

血を血で洗い、国家に反逆する者を問答無用で排除する。

それが俺達の仕事。

「品川プリンセスホテルで黒翼人による籠城事件発生。直ちに現場に急行しろ。」

携帯から告げられる次の任務…

今日もまた俺は一つの憎しみを殺し、幾つもの憎しみを生んでいる。

end

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