あれから一度も会わないまま2週間がすぎた頃、ホームルームで夏希が退学した事を告げられた。ショックは受けなかった、なんとなくわかっていたから。それでも本当の理由が知りたかったけれど、先生は教えてはくれなかったし、彼女は友達がいなかったので真実はわからなかった。
次の日、総二は坊主頭にして登校した。まわりから失恋したからだとか色々聞かれたが、ファッションだと言いきった。本心は失恋の為ではなく、夏希に迷惑をかけたという思いからの反省を込めた総二なりのけじめだった。
それくらいからだろうか、総二は周りから大人っぽいと言われるようになっていた。総二は変わったつもりはなかったが、夏希と出会い恋をし、童貞を失い、後悔を伴う失恋をした。その影響で以前のように感情をあまり表に出さなくなり、自然に冷静さを身に付けていた。童貞でなくなった事も余裕につながっていたのかもしれない。その変化は二年に進級してからはっきり形になって表れた。たびたび後輩からの告白を受けるようになったのだ。夏希への思いを断ち切るように、二股にならないのならばすべて受け入れた。ユリ、トモミ、ユカリ、誰と付き合っても夏希を忘れる事はできず、本気にはなれなかった。だから彼女達の気持ちを考えようともせず、自分のやりたいように振る舞った。その結果、恋人関係は長く続く事はなくいつも最後には振られた。そんな恋愛を繰り返しながら、高校生活は過ぎていき、季節は総二にとって一度目のセンター試験を迎えようとしていた。