そして、世界。
世界は暗く、陰惨なニュースに満ち溢れていた。
異常気象による物価の高騰、凶悪犯罪の若年化、
様々なものに対する不正、偽装、ごまかし、
そしてネット上で繰り返されるありとあらゆる対象への誹謗中傷。
電車の吊り広告には衝撃的な事件をさらに衝撃的な言葉で煽る見出しが並び、
明るいニュースを報道することのないキャスターからは笑顔が消えていった。
人は何が正しいことで、何が悪いことかを判断する力を次第に無くし、
自己という意識を失ったまま社会の巨大なうねりに飲み込まれた。
何かを変えようとする気力も無く、ただ目先のうまくいかないことに対する不満だけを口にする人間が増え、
辛うじて踏み止どまっている人々も将来に漠然としたしかし確実な不安を覚えていた。
・・・そんな世界で、悪魔といじめられっ子は出会った。