その日は消灯時間になっても大きい声をださないように気を付けながら、夜遅くまで二人で話をした。いずみは一学年下で隣町の高校でバレーボールを頑張っている事。家庭的に見られるが、実は料理が苦手な事。同じ盲腸で入院していて、明日には退院してしまう事。さっき初めて会ったのにそんな気がしなかった。だから総二もめったに話さない夏希との事まで話した。話をしながら仲良くなっていく中で、明日には会えなくなってしまうのは少し淋しいと感じていた。
次の日、目が覚めると隣のベットは空っぽだった。どうやら遅くまで起きていたせいで、いずみが帰る時に爆睡していて気が付かなかったようだ。せっかく仲良くなれたのだから、連絡先を聞いておけばよかったと後悔した。だが再会するのにそれほど時間はかからなかった。
総二は退院し、センターの追試を受けた。だがそれは思っていた以上に難しく、散々な出来になってしまった。その結果、国立大は不合格。もともと私立に行く気はなかったので願書も出していない上に、大学に行かず働く気もなかったので、大学に落ちたその日より総二の肩書きは『浪人』になってしまった。なった当初は独学で勉強すると、はりきっていたが、実際の所は自信がなかった為、親に頼み込んで予備校に通うようになった。そして迎えた入校式、そこには受験生になったいずみがいた。