初恋は男の子だったし、テレビに出てるアイドルや俳優…町行くカッコイイ男の人にだって魅力を感じる。
それまで同性に何か…普通に可愛いと思っても『ときめき』めいた感情は持った事が無かった。
彼女に会うまでは…
私がアパートに引っ越して程なくして、何と彼女が近所に引っ越して来る事になった。
彼女の子供の一人が喘息が酷く空気の良い場所を探していて、それがたまたま近所だったのだ。
木々が生い茂るピンクの家。そこはかとなく重ねた年数を感じさせる素敵な家。
近所になった事で、共通の趣味の本を貸し借りしたり、一緒に夕食の買い物や私が身体に合わない下着をしているのに気付き、合う下着を町まで買いに付き合ってまでしてくれた。
それまで家族唯一の女性である祖母は嫌悪の対象の私の下着なんて一緒に買いに行ってくれるはずも、買ってと頼んでも買ってくれるわけも無く…。
でも、膨らみかけの胸に下着を付けていない事が気に入らないらしく、それさえも嫌悪の対象として散々酷くキツイ事を言われた。
お金も無い子供にどうしろというのか…。
彼女と出会って無かったら、未だにきちんとした下着を買えてたか分からない。買い方を知らないから。
小さい頃…時計の見方から、お金の計算・自分の住んでいる日本地図の場所にバスの乗り方…運動靴の蝶々結びも、テレビや独学で覚えた。
家族は口先では教えるとは言うものの、先送りした上に出来ないと教えても無いのに散々…延々と何回も小学生前から私をなじった。
彼女にもその事は話した事があるけど、むやみに同情する事もその場で流す事も無く、あるがままに聴いてくれたし、彼女の幼い頃の話しもしてくれた。
その頃には彼女が居ない世界が信じられない位に、私の中は彼女でいっぱいになって、いつも初恋みたいな甘酸っぱい気持ちで幸せで幸せで…自分のどす暗い闇に沈んだ心に光が満ちた気がした。
彼女に対する甘酸っぱいそれは『恋』と呼んでも間違い無い気持ちだと思った。