不思議なもので今までは産婦人科の前を通る時、待っている妊婦さんらを見ても何も思わなかった。
自分にはまだまだ先のことで関係ないやってぐらいな気持ちだったからだろう。
それがなぜか今日はやけに妊婦さんに視線が動く。
まだ目立ち始めたお腹の人や、今日明日にでも産まれるんじゃないかってぐらい大きなお腹の人。
さまざまな妊婦さん達がそこにいた。
待ち時間もさほどなく、割とすぐに名前が呼ばれた。
診察室に入り先生に説明をする。
｢妊娠の疑いがあって検査薬で調べたら反応が出たので診察を受けに来ました。｣
｢分かりました。
隣の診察室に移動してください。｣
この間とはまた違う緊張感で診察室に入る。
診察台に乗ってこの間と同じ感じで診察が始まる。
カメラが入って先生が口を開いた。
｢赤ちゃんいますよ。｣
あたしからも見える位置にあったモニターを見ると、まだ形になり始めたばかりの小さな命が映っていた。
｢現在、8週目に入ってますね。心音も元気ですよ。｣
そう言うと先生は赤ちゃんの心音を聞かせてくれた。
｢ドッドッドッ…｣
まだ小さいけれど力強く生まれた命。
あたしはお母さんになったんだ。
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