(もう朝か。でも後少し眠れそうだな)
ハデナとの戦に見事勝利したバリアースはついに念願だった宗教と領土を統一した。
ディゾル要塞は陥落し、ハデナの重鎮たちは皆、戦犯として処刑された。
(ここ一ヶ月間忙しかったな...。凱旋パレードや毎日繰り返される勝利の宴であまりゆっくりできなかったし)
ギリアムやカーレル、他の隊長たちはもはや英雄であった。大陸は統一され、戦をすることはもうないであろう。
(俺はこれからどうすればいいのだろう?)
ギリアムの心にはそんな一抹の不安がよぎっていた。
そのとき。ドンドン!と扉を叩く音がした。
(また宴の誘いだろうか?)
「ギリアム!いるのか?緊急事態らしい。隊長全員神殿に集合だ!」
声の主はカイエンだった。
カイエンとは教会騎士になって一番最初に知り合った。
見かけは中年の男だがまるで熊のような体をしており両手には鋼鉄でできた義手をしている。
近距離での格闘を得意とし、先のハデナとの戦いでは三十年間第一線で戦っていた強者だ。
同じ平民出身だったので年は親子ほど離れていたがすぐに打ち解けた。
父親のいないギリアムにとってカイエンは父でありまた師であった。
剣術は自分で学んだが格闘や戦いのスタイルなどほとんどはカイエンから教わったものだった。
2人はとにかく神殿に急ぐことにした。
ゴーン...ゴーン...。
悲しげな鐘の音か響いている。
二人は悟った。
教会が鐘を鳴らすときは決まっている。
誰かが死んだのだ...。
二人が神殿の中へ入ると他の隊長たちやバリアースの重鎮たちはもう集まっていた。
「遅いぞ!二人とも」カーレルが皮肉のように口を開く。
「すまない」
ギリアムはいつもなら言い返すところだったがこのときばかりは素直に謝った。
そう。この雰囲気はただごとではないのだ。
重鎮たちはなにやらザワザワと話している。
口を開いたのは教会でも第二の権力をもつ異端諮問委員長のモゼフであった。 「皆のもの静粛に!」いつもなら教皇が出てくるところだが今日はいない。
「教皇が今朝亡くなられた」
まわりの空気が凍り付いた。
モゼフはこう付け足した。
「教皇は暗殺された。死因は背後から剣で斬りつけられたためだ。教皇の護衛をしていた教会騎士5000名も全員殺されていた」
こんな芸等ができるものは私は数人しか知らない。
次の言葉に隊長たちは耳を疑った。