「ここは…どこだ…」
龍華は気が付くと白い床の上にいた。
白い床は大理石の様なもので出来ているらしく、磨かれた表面が龍華をまるで鏡の様に映し出している。
そして両サイドには馬鹿でかいギリシア風の柱が威風堂々とそびえ立っている。
「神殿…みたいだな…」
龍華がそう呟いた時、
『メフィア…』
神殿の奥からまるで心に直接語り掛けるテレパシーの様な神秘的な女性の声が聞こえてきた。
龍華は霧が立ち込める神殿の奥へと進んだ。
『メフィア…』
段々進むにつれて声は大きくなり、心ではなく耳で感じる実感的な声へと変わって行く。
「メフィア…
早く…来て…」
龍華は霧のヴェールを抜けて神殿の奥へと辿り着いた。
そこに居る者は白いマントの様なものを纏い、フードを深く被り、そして背中には…
「白い…悪魔の翼?」
第三章
白き翼の伝説
10月08日
11時30分
J〇L263便 羽田→新千歳
「起きなさいよー」
神秘的な声では無く、大人の女性のうんざりした声に龍華は起こされた。
「もうすぐ着陸態勢に入るんだって。
さっさとシートベルト絞めなさい。」
「あれ…」
龍華はまるで確認するかの様に辺りをきょろきょろと見回す。
「夢か…」
「あんた口を阿呆みたいに開けてボーとしてない!」
凛とした落ち着いた雰囲気の女性の天使…咲島ジュリアはシャキッとしろと龍華に喝を入れる。
ようやく夢と現実を区別出来る様になった龍華は慌ててシートベルトを絞めた。
「咲島さん…まるでガキを起こす母親みたいですよ。」
二人の様子を見てそう呟き苦笑いしたのがお洒落な眼鏡を掛けたインテリ風の茶髪の人間の男…鬼島力也。
「「五月蠅い魔法オタク!!」」
二人が口を揃えて力也へ悪態を吐いた。
よほど親子扱いされるのが嫌だったらしい。
「当機は間もなく新千歳空港に到着…」
ファーストクラスにアナウンスが流れる。
何故この三人が北海道へ行く事になったのか?
話は一週間前に溯る。