「暴力からは何も生まれない。
・・・僕はクロオと話し合ってみようと思っている。
クロオにだって心があるだろう?
お互いに腹を割って話せばきっと分かり合えるんじゃないか。
それに、場合によっては幾らか包んでもかまわないし・・・。
物事を平和的に解決するのが大人というものだろう?」
そう言うとアオキはさも賛同を得た用に、満足そうに皆を見渡した。
「偽善者め・・。」
アカダは心の中で呟いて溜め息をついた。
「シラトリさんはどうするの?」
キバヤシが声をかける。
「私?私は何もしないわ。」
シラトリの言葉に皆驚いて顔を上げた。
「だって殺されちゃうかもしれないんだよ?それでもいいの?」
キバヤシが困惑して
言った。
「だってクロオさんは強いんでしょう?・・それに話しをしても聞いてくれなさそうだし、
逃げきれるとも思わないわ。」
「だって死ぬかもしれないんだよ!?」
キバヤシは涙目になった。
「それが避けられないなら、受け入れるしかないじゃない。
もちろん私も怖いわ。・・・でも大切なのは、運命から目をそらすことではなく、最後まで見つめつづけることだと思うの。
クロオさんの死が私の運命なら、私はそれを黙って受け入れるわ。
そして、取り乱さず最後の瞬間まで自分らしく生きるの。
私がたとえ死んだとしても、見ていた人は言うでしょうよ。
あの人は最後まで変わらなかったって。
クロオに負けなかったって!」
・・・そして、色盗人クロオがやってきた。漆黒の目、漆黒の体、漆黒の顔。
暗黒の闇はますます巨大になり、見るもの全てに激しい恐怖を与え、彼の通った後は道も空も建物も全て黒く黒く染まっていく。
色盗人クロオがやってきた。
アカダは勇敢に立ち向かった。
クロオに真正面から掴みかかり、殴り、蹴り、締め上げ、ひっかき、噛み付き・・・。
およそ自分の持てる力の全てを使って懸命に戦った。
しかし、それはクロオにとって悲しいほど無力な抵抗だった。
クロオは易々と彼を掴まえると、その大鎌の様な右腕で彼を頭からばさりと真っ二つに切り裂いた。