「ゴメン。」
藍治は少し悲しそうな顔をした。
「別に良いんだけど…どぉしたの??」
アタシは藍治の乗ってるズーマーのハンドルに手を置いて、立ちはだかるように前に立った。
「椿はさぁ、いつも皆と違うこと言うよね。いつも良い方に言ってくれるよね。」
アタシは黙って聴いた。何を言われるんだろうってドキドキした。
藍治はアタシの心境なんて知るよしもなく一つ一つ言葉を確かめるように話し続ける。
「何となく判ってたかもしれないけどオレはずっと1年の時から椿が好きだよ。オレと付き合って欲しいんだ。」
「…」
「いつもの冗談じゃないから。ちゃんと考えてくれる???」
アタシは卒倒しそうだった。緊張した時みたいに脈が速いのが判る。
ズーマーのハンドルを握る手が汗ばむのが判ったのでパッと放す。
何か言わなきゃいけないのに何も言えずにいる。今何て言えば良いの??
アタシと藍治の間には気まずい沈黙が流れる。
その沈黙を破るべく先に口を開いたのは藍治だった。
「じゃ…オレ帰るな。また明日。」
そう言ってヘルメットを被りバイクのエンジンをかけはじめた。
どうしよう…何か言わなきゃ!!!
「あ、藍治!」