はい、ガンです

めぐみ  2007-11-28投稿
閲覧数[250] 良い投票[0] 悪い投票[0]

『病名を知っていますか?』
『はい、ガンです。』

隣で夫はそう答えた。私はその時に初めて夫の病名を聞いた。夫が56歳になったばかりの時だった。
その後、4ヶ月で写真になってしまった。末期癌だった。
19歳の時に24歳の彼と出逢った。息子と娘に恵まれ生活は苦しかったけどトラックの仕事をして支えてくれた。
勤めていた会社が倒産し別の会社で解体作業員をしていた。
寒くなり始めた頃から体調が悪いと訴え始めた。食事が喉を通らないと‥
何度も病院に行く様に説得したが、病院嫌いの頑固者で言う事を聞かない。
そんな時に8歳の孫娘が風邪をひいた。
そして孫からじいちゃんへ電話が鳴った。
『わたしも病院に行くんだからじいちゃんも病院に行きなよ!!』
次の日に一人で病院へ行った。孫には弱いみたいだ。
しばらくしてから彼は『一緒に医者へ行くから仕事休んで』と言われとりあえず不安に感じたが何も聞かずに一緒に行った。
そして検査結果を告げる前に医者の質問に彼は『ガンです』と答えたのだ。
私は愕然とした。最初に行った小さな病院で病名も聞いていたみたいだ。私は夫の病名を夫の口から聞いて初めて知った。
カラダが痩せていくのに入院前日まで仕事をし入院してまで仕事の心配をしていた。
癌に侵されて相当な激痛があったに違いない。でも痛いって言葉を誰も聞かなかった。
最期の日、家族や兄姉、孫に囲まれて彼の時間は止まってしまった。
弱音ひとつはかずに私達の事ばかり気に掛けて気丈だった。
私達家族はあなたをとても尊敬しています。愛してくれてありがとう。
告別式の朝に彼は目から涙をこぼしました。体液が目から少し出ただけの事ですが泣いているみたいでした。
きっと未だに心配をしてるんでしょう。今度はご自分の事を考えて下さいね。
今でもみんながあなたを愛していますよ。まあ私が1番ですけどね。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 めぐみ 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ