ある夜の日、女はいつものように家に帰っていった。
高級マンションほど立派でもないのだが、この周辺では素朴な建造物が多いせいか、高級に分類されている。
三十路前の風貌、まだ若いであろう彼女はエレベーターの5階を示すボタンを押す。
彼女以外の人間は、居ない。
やがて「ピンポン」という機械音を耳に、女は出て、玄関の扉を鍵で開ける。
電気はついておらず、見慣れた部屋も一瞬不気味に見えてしまう。
すぐに電源スイッチを押し、部屋は人口的な明かりに包まれる。
部屋の様子が鮮明に見えてきた頃、女はリビング端にある電話に留守番電話があったことを示す光が点滅していることに気付く。
すかさず再生ボタンを押す。
[…ゴメンね、今日行けなくて…明日は大丈夫だよ!]
留守番電話はそれだけで、しかし女は疑問に思う。
それが聞き覚えのない子供の声だったからだ。
(間違い電話、かな…)
特に気にも留めず、テレビの電源を入れる女。
明るい笑顔の男性がお笑いで観客を笑わせていた。
午前0時頃…。
女は夜食かスナック菓子をあさりながらテレビのニュースをただぼーっと眺めていた。
ふと、玄関からの物音に、女は首だけ向けて反応する。
金属と金属を擦り合わせたような…不吉な音。
(…何だろう)
気になり女は玄関へ向かう。
どんっ!
(…え?)
よくわからなかった。
女の腹部に激しい衝撃。
腹部を見ると、子供の頭部。
子供は女を見上げた…
蒼白の顔に光のない眼、歯は茶色く染まっている。
「お母さん見つけたぁ〜」
腹部に突き立てらてたナイフは、女の腹に赤い花を咲かせた。